今年で料理人になって15年目ですが頻繁にこういう質問を受けます。
料理人って修行が厳しそうだしなるのが大変そう。
給料とかも安そうだし仕事もきつそうだし…。
こういった疑問について筆者の体験談を交えつつこの記事で解説します。
結論から言ってしまうと…
料理人になるための修行は想像できないほどしんどいです。
単純に時給換算すると300円くらいで絶望します。
この記事の内容
現役の料理人が修行時代のことを話します。
仕事内容とか労働環境とか給料とか。
それでも料理人はいい仕事だと思う理由を解説します。
ついでにブラックだという指摘について筆者の個人的な見解も書きます。
筆者は東京の料亭で9年間修行しました。
現在は日本を飛び出してカナダで日本料理を作っています。
料理人になるための修行は大変だけど料理人はいい仕事です
もう一度言いますが修行ははっきり言ってめちゃくちゃしんどいです。
料理修行は完全な年功序列と「はい」か「すいません」しか言えない世界
僕がこの業界に入ったのは23歳の時。
周りは高校出てからや専門学校行ってから入る人が多かったので遅いスタートです。
年下の先輩もたくさんいました。
仕事がきついとか労働時間が長いのは当たり前の世界。
同じように大変だったのが先輩、上司の言うことには逆らってはいけないと言うことです。
何か言われたら「はい」以外の返事は許されません。
返事をしなかったら怒られます。
ミスをしたらすいませんの一言。
たとえ理由があってもそれを言ってはいけない世界でした。
よく言い訳は口答えと言われたのを覚えています。
僕もそれなりの覚悟で入った世界でしたが完全に想像の上を行ってました。
料理は好きでしたけど修行時代は料理が嫌いになってた時期もあります。
修行時代は毎日こんな生活でした
ちなみに、修行時代はこんな生活をしていました。
今考えるとよくこんな生活してたと思いますね。
もう一回やれと言われたら全力で拒否します。
給料
月給12万で手取りは10万くらいでした。
ボーナスは年2回。
夏は小遣い程度(数千円)。冬は給料の1.5倍~2倍くらい。
まぁもらえるだけでもありがたいですけどね。
当たり前ですが残業代とか一切出ません。
多分ですが残業代を出すと店が成り立たないです。
給料は安いですが、無料の寮に入っていたので水道光熱費など生活費は一切かかりません。
毎月出て行くお金は携帯代くらいです。
東京のど真ん中に生活費ゼロで住むことを考えると一応納得できる部分はあります。
労働時間
朝の7時半くらいから夜の9時半くらいまで。
昼と夜の間に休憩が1時間ほどあります。
忙しかったり暇だったりで変わってきますがだいたい普通の時はこんな感じです。
だいたい想像がつくと思いますが立ちっぱなしです。
休み
週休1日。
長期休暇は盆暮れGW。
辛い修行時代でしたが、この長期休暇を目標にして耐えてました。
これがなかったら多分続かなかったです。
仕事内容
- 1年目 雑用、洗い物、まかない作り。下働き。(追い回し)
- 2年目 器を用意したり、漬物作ったり、入ってきた後輩のフォローしたり。(追い回し2年目)
- 3年目 揚げ物とか焼き物とか。(揚げ方、焼き方をローテーション)
- 4年目 引き続き焼き物やりつつ前菜とか盛り付けとか。(焼き方、八寸場)
- 5年目 前菜とかやりつつ煮物とか吸い物とか。(八寸場、煮方)
- 6年目 煮物、吸い物、甘味。(煮方)
- 7年目 前年と同じ
- 8年目 前年と同じ+お刺身切ったり魚下ろしたり(煮方、脇板)
- 9年目 前年と同じ→退社
時給換算すると…
一度だけ後輩と一緒に自分たちの仕事が時給換算でどのくらいなのか計算したことがあります。
300円くらいでした。
切なくなったので二度としませんでしたけど。
それでも、料理人という仕事はいい仕事です
料理人になるための修行は確かに辛い。これは間違いありません。
それでも料理人はいい仕事だと言えます。
理由は3つあります。
- 自分の料理を食べて喜んでる人を見るのは嬉しい
- お客さんに感謝してもらえる
- 何より好きなことをしてお金をいただける
自分の料理を食べて喜んでる人を見るのは嬉しい
料理が完成するまでには色々な工程と時間がかかります。
また、新しい料理を作り出すには長い試行錯誤を繰り返します。
これって結構大変なんです。
苦労して作った料理をお客さんが食べてそして喜んでくれるのを見るとその苦労も吹き飛びます。
そして嬉しくなるんです。
料理人にはこういう人が多いです。
M体質なんですかね。
お客さんに感謝してもらえる
これは先ほどの理由と似てます。
美味しいものを食べて満足したお客さんからはほぼ全員に感謝されます。
こっちはお金もらって食べてもらってその上感謝される。
こんないい仕事ないです。
もちろんこっちからもさらにお礼をするのは言うまでもありません。
好きなことしてお金をもらえるから
料理が好きで料理人になって、好きな料理作ってお金が稼げる。
好きなことをしてお金が稼げたら楽しいのは誰でもどの仕事でも同じです。
もちろんそうするにはしっかりとしたスキルを身につける必要がありますが。
ブラックという批判は正しい
料理修行の話をするとみんなにブラックな業界だねと言われます。
それは間違いありません。
低賃金、長時間労働、人間関係。どこを切り取ってもブラックでしかないです。
ですがこうではないでしょうか。
どんな仕事もどんなスキルもモノにするには一定の作業量が必要
料理業界に限らずあらゆる職種、スキルはモノにするにはそれなりの作業量をこなす必要があります。
その中で試行錯誤を繰り返していくうちにだんだんと身についていくものです。
皆さんの周りを見てください。
思考停止してただ作業をこなしているだけの人、考えて作業をこなしつつプラスαのことをしている人、どっちが成長してますか?
これは仕事に限らずです。
ゲーム、スポーツ、投資、ブログ。
何かすごいスキルを持っている人は一つのことに集中して大量の作業をこなして成果を上げています。
収入が思うように発生しない時期もあるのが普通です。
たとえ会社に所属しないでフリーでやってる人も
みんなどこかしらでセルフブラックを経験してる
ということです。
もちろん、倫理観の欠如や違法な働き方を強要する会社や上司は許されるべきではないです。
飲食業界は現状法を無視した労働環境の場所も多いですがこれは改善されるべきことです。
そうじゃないと業界が続いていかないと個人的には考えています。
まとめ
今日は個人的な経験を交えつつ料理人になるための修行というものについて書きました。
今の時代は料理人になるためにわざわざ修行という選択をしなくても良いと個人的には考えています。
スキルさえ身につけることができるのであればその過程はなんでも良いのです。
ただし、どんな仕事でもたくさん作業しなければいけない時期はあります。
そこは覚悟を決めてやっていかなければいけない部分です。
成果を出すためにやることはどんな仕事でもそんなに変わらないということ。
それでもあえて修行というものを選択するのはアリです。
ものすごく大変ですけど。
それでも料理人はやっぱりいい仕事です。
一応断っておきますが僕はブラック企業とかを肯定する気は全くありません。
無知につけこんで搾取するような会社は一掃されるべきです。
念のため。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。